(THOM BROWNE. NEW YORK)は2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。会場中央には、円錐形の巨大なものと2つの小さなものが白い布で覆われていて、それを取り囲むように13個の大きな案山子のような形状のものが同様に隠されている。そして、トムのシグネーチャーであるグレーの4ピース(3ピースのスーツと)に身を包んだ2人の執事が現れ、白い布を順番に両端から2人で剝がしていく。隠されていた正体は、巨大な絵画を入れるような木枠。中央はシャンデリアと2脚の椅子だった。 2人が向かい合わせに椅子に座ると同時に、本編の幕が開けた。グレーの3ピースにとリアルファーを組み合わせエルメス傘コピーたコートを着た男が連続して3人、少し間隔をあけてゆっくりランウェイを歩きはじめる。3人ともに頭の先きから爪の先まで同じものを着ているが、最初の男の衣装はハードなクラッシュ加工で、次の男は着古したかんじのユーズド加工、最後の男はまっさらの新品である。手にはミニチュアダックスフンクリスチャンルブタン靴コピード型のバックを持っていて、山高帽を頭に被るのではなく顔に被っている(小さい穴があいているので前は見える)。その様はルネ・マグリットの絵画「The Son of Man」を連想させる。マグリットが顔を隠したのは、帽子ではなくてリンゴだったが 。 その後の構成は、基本的に同じである。同じ服を着た3人が連続して歩き、歩き終えた後はフレームの前で新品の1人と加工の2人が向かい合って対峙する。コートは、柄をで表現したの中綿コート、チェックの格子の間にリアルファーを配した、襟と袖とヘムにリアルファーを配したピーコート、を施した黒のシングルチェスターコートなど。スーツとジャケットは、ダブルブレストの黒のスーツ、ブレザーとグレーのウールパンツのジャケパン、グレー系のチェックのスーツなどで、パンツはショートパンツとクロップド丈の。裾は折り返しが太め(10cmほど)で、裾幅もいつもより広めだ。 小物では、肌が透ける薄手のソックスと、そのソックスを止めるガーター(ソックス)ベルト、レザーのグローブ、スウェードとレザーのコンビネーションシューズ、ビッグサイズのレザートランク、そして犬のバッグがコーディネートを引き立てている。カラーパレットはグレー、ブラック、ホワイト、ネイビーを主体に、ブラウン系を挿し色に使っている。 フレーム越しに対峙する同じ服を着た、まっさらな男と、ちょっとだけ疲れた男と疲弊した男。その様は「現在、過去、未来」を表現しているように見える。どれが現在でどれが未来かの解釈はその人しだいだが、ショーの雰囲気は明るく機知に富んでいて、最後に挨拶でランウェイに現れたトム本人も笑顔だった。未来がボロボロじゃなくてピカピカだといいな、と思った。 TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)